京王電気軌道御陵線跡
東京都八王子市長房町451-3
仲が悪いわけではないだろうが、南浅川の横山橋近くに建つ住宅は高い塀で仕切られている。実はこれは塀ではなく、かつてこの地を通っていた京王電気軌道御陵線の高架線橋脚の遺構なのだ。
同線は大正天皇崩御に伴って造営された多摩御陵へ参拝客を運ぶ目的で、昭和6年(1931)に北野−御陵前駅間に敷設された。皇族の利用に備えて、貴賓車両も造られたという。
路線は現在の京王電鉄高尾線の北野−山田間を走って北へ曲り、横山橋付近で甲州街道と南浅川に交差して、現在の御陵参道が大きく曲るあたりに終点の御陵前駅があったらしい。ところが、実際には国鉄(現JR中央線)東浅川駅を利用する人が多かったため昭和20年(1945)に廃線となり、跡地は昭和42年(1967)に開通した現在の高尾線に受継がれた。
2脚ある橋脚の一方は植木鉢の棚と建物の間に埋れて一部が見られるだけだが、南浅川に近い方のもう一方は全体が表に現れ、落書などの毀損もなく旧態をよく残している。
よく見ると、ロッククライミングに使う登攀用のボルトが打たれていた。誰か登った人がいるらしい。上部はどうなっているのか、登ってみたい衝動に駆られた。