小笠原伯爵邸
東京都新宿区河田町10-10
古い洋館を訪ねると、居間、寝室、書斎、食堂などと機能別に分けられた部屋に並んで、喫煙室が設けられているのを見ることがある。かしましく歓談するご婦人方から別れ、殿方が集まって良くも悪くも大人の会話を密やかに交わす場所として機能していたのかも知れない、ちょっと意味深な場所だ。
そんなイメージとは裏腹に、小笠原公爵邸の喫煙室は外壁を小鳥やハートマークで乙女チックに飾られ、明るく陽気な気分に満ちている。
曾禰・中條建築事務所が昭和2年(1927)に建てた元小倉藩主小笠原長幹(ながよし)公爵の邸宅は、日本には珍しいスパニッシュ様式を採用しているだけでなく、その飾付けの楽しさでも類を見ない珍しい洋館だ。戦後、東京都に所有が移って寂れていた時期もあったけれど、平成14年(2002)に高級レストランとして甦った。
葡萄棚が透かし模様になったエントランスのキャノピーから射込む光は、訪れる紳士淑女達をロマンチックに祝福するかのようだ。