道供養塔
東京都渋谷区幡ヶ谷1-10
「供養」というのは亡くなった人の冥福を祈ることだけれど、「針供養」のように日頃お世話になっているものに感謝の意を表す意味でも使われる。
散歩をしていてよく見かける「橋供養」の碑の場合は、毎日お世話になる橋への感謝と、水害で橋自身が流されたり人が死んだりすることへの供養の意味がこめられている。
甲州街道に建つ道供養碑(文化三年(1806)建立)は、「毎日人に踏まれてかわいそうに」と道をいたわり、「おかげさまで道中無事に旅することができたり、ほかから運ばれたものを得ることができる」と感謝の意を表すもので、ほかではあまり見ない珍しいものだ(人見街道にも一例ある)。
難しい言葉や概念を声高に叫ばなくても、先人はこうして、人はいろいろな人や物に支えられて生きていると言うことを認識し、それをふまえて社会生活を営んできた。ちょっと話は飛ぶが、古くなった物には付喪神(つくもがみ)が宿るという考えも、物を大切にする考えをやさしく表している。
“MOTTAINAI”が国際語になる時代に、そういう素朴で優しい気持ちを大切にしたい。