2006年8月20日(日)

回向院

東京都墨田区両国2-8-10

猫供養

“回向”を辞書でひくと、「死者の成仏を祈って供養を行うこと」とある。回向院はその名の通り、有名無名さまざまな人や動物の霊を鎮めるために建てられた。明暦三年(1657)の大火の無縁仏を弔った万人塚がその起こりだという。

無縁仏供養塔群

境内には天災や事故などの死者を弔う石碑が林立している。たとえば、大正十二年九月一日の“大震災横死者の墓”の横には、“時維天明三年癸卯七月七日八日信州上州地変變横死之諸靈魂等”と彫られた1783年浅間山噴火の慰霊碑が建っていた。その裏には帆掛け船型をした海難供養碑が鎮座している。それぞれの碑文を子細に調べれば、事故・災害略史ができそうだ。

ここは動物供養のお寺としても有名だ。珍しいものでは大正十五年に建てられた膃肭臍(オットセイ)供養塔があるが、もとは徳川四代将軍家綱の愛馬を供養したことにはじまったといわれ、三味線になった猫や絹糸を生んだ蚕など実用に役立った動物たちの供養碑が並んでいる。最近はペットとしての犬猫や小鳥の慰霊に訪れる人が跡を絶たず、かわいい名前の書かれた卒塔婆が林立していた。

奥の方にはひときわ丁寧にまつられた「ねずみ」の墓まである…と思ったら、それは“鼠小僧次郎吉”の墓だった。

墨東の回向院こそかなしけれ 碑のおほかたは横死者のもの (加藤満智子)

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