日本水準原点標庫
東京都千代田区永田町1-1
休日の永田町は別世界だ。それは“平日の様子と比べて”という以上に、日本中のどこと比べても世界が違って見える。
官庁は休日出勤がない上に、ここには飲食店や映画館などの一般人を対象にした施設が全くないので、物々しい警備の警官たちを除いては徹底的に無人なのだ。しかも、高層ビルがないので空が広く、街路樹は豊かで、道も建物もゆったりとしてゴミゴミしていないのが気持ち良い。道の真ん中で、大きな声で叫んでみたい衝動に駆られる。
アオスジアゲハに誘われて、国会議事堂前の公園で休憩することにした。夏を惜しんで鳴く蝉の声がにぎやかだ。
木立の中に、日本人建築家が手がけた西洋建築としては現存最古といわれる、日本水準原点標庫が建っていた。このなかには日本水準原点というものが納められていて、「標高○○m」というときの基準となっている。その標高は24.4140m。基準なのに“0”ではないのがなんだかおかしい。
明治24年(1891)に旧陸軍省・参謀本部の敷地に建てられたのだが、参謀本部がなくなって公園となったいまも日本の水準を守って、誰もいない公園の片隅で律儀にがんばっている。