旧朝香宮邸
東京都港区白金台5-21-9(東京都庭園美術館)
邸宅から遠く離れた庭の奥に大きな白大理石の彫刻(風、安田 侃作、2000年)を見つけるまで、ここが庭園美術館であることを忘れていた。芝生の庭に配置された作品はどれも控えめで、三々五々、庭でくつろぐ人たちも取り立てて作品に注意を払っている様子はない。ここでの主役は、「アール・デコの館」と呼ばれる旧朝香宮邸そのものなのだ。
だからここには、美術館らしい企画展のない時に訪れるのが良い。1925年(大正14年)にパリで開催されたアール・デコ博覧会に感銘を受けた朝香宮が、日本に再現したアール・デコの意匠を存分に楽しむために。作品展示のない部屋では写真撮影が許されるのもうれしい。
しかし、すべてが芸術的な洋間のみのお屋敷で、宮様はどんな生活をされていたのだろうか。すばらしい邸宅にため息をつきつつも、一般庶民としては、ごろごろとする畳の部屋もうたた寝をするこたつもない生活は、やっぱり気詰まりだと思うばかりだった。