次太夫堀をたどる
かつて狛江、世田谷、太田の田園地帯を潤した六郷用水は、慶長16年(1611)に江戸幕府の用水奉行・小泉次太夫によって開削され、彼の功績を称えて次太夫堀と呼ばれたそうな。そのあとを辿ってみよう。
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スタートは多摩川サイクリング道路を調布市と狛江市の境から300mほど下った水神前から。ここにかつて次太夫堀の取水口があった。
次太夫堀(六郷用水)を埋め立てた福祉会館通りに沿って東へ向かう。むいから民家園(狛江市立古民家園)の前の田中橋児童公園に六郷用水の説明と付近の地図があるので、これを参考に周囲を散策してみよう。
少し北西に戻って伊豆美神社の森を目指して走ったら、隣の兜塚古墳から福祉会館通り沿いの経塚古墳、田中橋から南へ細い道を入って亀甲塚古墳と古墳巡りをして、小田急線・狛江駅前の泉龍寺にたどり着く。駅前とは思えない静けさのなかで一息入れよう。
駅前からバス通り(狛江通り)にクロスするいちょう通りが、小田急線をわたる手前に野川緑地公園の入り口がある。今は二子玉川まで流れている野川だが、昔はここで六郷用水に合流していた。この野川の跡が緑道となって、野川の小金橋付近へ続いている。逆方向へ回り道になってしまうが、車の通る道は避けたいのでこの道を取る。
用水の跡を忠実にたどりたいなら、そのままいちょう通りから世田谷通りに出て、一の橋、二の橋という交差点の名前に面影をなぞりながら野川へ出よう。
どちらにしても、野川に沿ってのんびり次太夫堀公園まで走ったら、公園の中を通って多摩堤通りをトンネルで越し、またサイクリング道路に戻る。すぐ多摩堤通りに行き当たるので左折して新井橋を渡る。車が多い割に狭いいやな道だが、東名をくぐる間だけ我慢してすぐ左手の細い道にはいる。六郷用水跡の碑と用水についての詳しい説明板があるのでちょっと勉強していこう。
用水跡に沿って永安寺、氷川神社とたどると仙川の水神橋に出る。ここではじめて水の残った次太夫堀に出会うことができる。
今は丸子川と名を変えた用水跡に沿って丸子川親水公園、岡本公園民家園がある。静嘉堂文庫、旧小坂家住宅、幽篁堂庭園跡地と、昔のお金持ちの別荘跡をたどっていくのもおもしろい。訪れるたびに住宅が増えて景色が変わっているとはいえ、南側には広々と農地が開け、北側は武蔵野の自然を残した国分寺崖線の緑が続くこの区間は、このコース中のハイライトといえるだろう。
ここから先は、細い道に外車が行き交う高級住宅地が続く。丸子川に沿って、国分寺崖線の上下の道を好きなように選んで走っていこう。大きな家にビックリしたり、思ったより自然が残されていることにほっとしたり、楽しい発見がいろいろあることだろう。
五島美術館、上野毛自然公園を過ぎ、第三京浜をくぐった先の丸子川沿いにある善養寺では奇妙な動物たちがお出迎えをしてくれる。この北には、日本でも最大級の帆立貝式前方後円墳だという野毛大塚古墳がある。狛江で見てきた古墳との違いにビックリさせられる。
都会の深山幽谷(!?)等々力渓谷まででひと区切り。心洗われるような自然の中でしばしの憩いを楽しもう。
帰りは多摩川沿いに戻るか、対岸に渡って川崎側の次太夫堀・二ヵ領用水をたどっても良いだろう。
(文中で紹介している各スポットと写真にはリンクが張ってあります。)