川崎・伊奈両代官謝恩塔
東京都国分寺市北町3-1-1(妙法寺境内)
「御代官様」といえば、「ご無体な」と続く。悪代官は勧善懲悪時代劇には欠かせないキャラクターだ。
とは言っても、世の中そんなに悪者ばかりではない。国分寺市と立川市の境に近い五日市街道沿いの妙法寺には、農民たちが代官に感謝して建てた塔が立っている。
武蔵野の新田開発は難儀をしたらしい。「武蔵野うどん」や「深大寺そば」が武蔵野の名物になるのも、米がとれなかったせいだった。川崎平右衛門と後任の伊奈半左衛門両代官は、そんな新田開発の苦労を助ける政策をとって農民に感謝されたというのだ。川崎平右衛門は小金井桜を植えたことでも名が知られている。
今の時代なら、功績があったからといって役人の像や碑を建てたりすると、とってもうさんくさい感じになってしまう。かつては、人と人の信頼や感謝が素直に表現できる時代があったのだなぁ、と、忘れられたようにひっそりと立つ塔に向かってしみじみ思った。
※ 西町の観音寺にも川崎氏の供養塔が建っている