勝 坂
神奈川県川崎市麻生区千代ヶ丘5-9
油断をすると、ものすごいスピードで風切って坂を駆下りている自分に気がつく。そして、どうも思っていた方向ではないと気づいて、またえっちらおっちら坂を上り返す。細山はそんな町だ。
山道というのは尾根や谷に沿っていたり、頂上を目指して進むというように法則性のあるものだが、ここでは宅地開発が進んだために土地のありようを無視した道が敷かれていて戸惑ってしまう。
そんなこんなで爽快と苦闘を繰返しているうちに、思いがけず展望の開けた道に出た。曇り空の下、右手(西)に丹沢の峰がぼんやりと見える。晴れていれば、その後ろに富士山もきれいに見えることだろう。正面に見えるオレンジ色の建物の一群は南大沢あたりだろうか。
道ばたの説明板によればここは勝坂と言い、眼下に見える小沢原古戦場で上杉氏を敗った北条早雲の孫の新九郎氏康が初陣の勝鬨を上げた事からその名が付いたという。戦に勝たなくても大声で叫びたくなる景色だ。
今では見わたす限り宅地の海が広がり、その中に島が浮かぶように残る緑はその波に洗われて今にも呑込まれそうだ。