多摩川決壊の碑
東京都狛江市猪方4
子供の頃から大雨が降ると川を見に行った。改修前の野川の今にもあふれそうな様子とか、多摩川の川幅いっぱいに広がって轟々と流れる濁流を見ていると、怖いとか言うよりも自然の力強さみたいなモノを感じて神秘的な気持ちになるのだ。
昔から治水がしっかりしていて水害を知らなかったからそんな呑気なことが言えるのだが、昭和49年(1974)9月1日に起こった狛江市猪方の堤防決壊の時はビックリした。
台風16号による豪雨で増水した流れが二ヶ領宿河原堰に堰き止められ、左岸の堤防を破って住宅街に迫ったのだ。自衛隊による堰の爆破によっても流れを変えることはできず、19棟の住宅が次々と流されていく様子は時々刻々TV中継され、その後、TVドラマにもなった(「岸辺のアルバム」原作・山田太一、主演・八千草薫、1977 TBS)。人の不幸を興がってはいけないと自分を戒めつつも、初めて身近で起きた全国版の事件にわくわくしてしまったことを思い出す。
2000年9月11日-12日に名古屋市を襲った水害に、ちょうど出張帰りに遭遇してしまい、立ち往生した新幹線の中で食料も情報も無しに丸1日閉じこめられたのはその時の報いだったかもしれない。
平成10年(1998)には堰も新しくなり当時の悲惨な面影はどこにも見あたらない。
今でも雨の後の堤防へ流れを見に来る人は絶えることがない。