絹の道
東京都八王子市鑓水989-2 (絹の道資料館)
大栗川源流の鑓水を通る絹の道は手軽なウォーキングコースとして人気がある。のどかな里山の景色と歴史の物語が、中高年のウォーキング愛好家の心をくすぐるらしい。
大栗川の御殿橋から北へ絹の道資料館を経て、3基の供養塔の建つ山道の入り口までは車の少ない車道を行く。この供養塔の後ろに隠れるように、「鑓水停車場」と刻まれた道標が建っていた。昭和の初めに計画された南津鉄道の遺跡だ。
南津鉄道とは昭和2年(1927)に設立された鉄道会社で、玉南電鉄一宮(現京王線・聖蹟桜ヶ丘)から鑓水、横浜線の相原を経て津久井町久保沢(津久井郡城山町)までが計画され、将来的には富士五湖まで延伸する予定だったという。当時は関東大震災後の建設ラッシュで、相模川の良質な砂利や木炭等を東京に搬出する事が期待されたが、昭和の大恐慌で計画は頓挫。幻の路線となってしまった。
そこから右手へ分かれる山道を登った先にある大塚山公園には、かつて鑓水の豪商たちの信仰を集めた道了堂があったが、今は礎石が残るだけだ。
こういう「幻の」とか「今は無き」というのに弱い。
道了堂跡に立つと八王子バイパスを行く車の音が、遙か遠い世界のもののように聞こえた。