日本航空発始之地
東京都渋谷区代々木神園町2-1(代々木公園)
欧州の工業国と言えばVolkswagenやBMWのドイツという印象が強い。Louvre美術館やChanelのフランスは柔らかいイメージがあるが、世界最速を誇った航空機コンコルド(1976-2003)や高速列車TGVを生んだすばらしい技術を有している。
明治43年(1910)12月19日、代々木練兵場で徳川好敏陸軍大尉が日本初の飛行に成功したアンリ・ファルマン機もフランス製だった。代々木練兵場跡の代々木公園にはこれを記念した「日本航空發始之地」記念碑がある。
徳川好敏陸軍大尉の後にドイツ製グラーデ機で飛んだ日野熊蔵陸軍大尉は、公開飛行前の12月14日に高度10m、距離60mという記録を残したが、日本初飛行とは認定されていない。機体整備中の非公式飛行であったという理由の他に、将軍家に連なる清水徳川家出身の好敏に花を持たせたのではないかという説がある。碑に隣り合って置かれた二人の胸像は微妙に離れており、お互いのライバル意識を表しているようでおもしろい。
大きく羽を広げた形の碑の中央には、大鷲が悠々と大空を滑空する姿が彫られている。その鋭い眼光からは、航空機が戦争の主役になっていく時代の雰囲気が感じられる。
その、航空機による空からの真珠湾攻撃によって太平洋戦争が始まったのは、碑の建てられた翌年、昭和16年(1941)12月8日のことだった。