ママ下湧水
東京都国立市谷保2963
谷保のあたりではハケ(崖線)のことをママというらしい。野川の水源となる国分寺崖線を引き合いに出すまでもなく、ハケは武蔵野を流れる多くの川の元となっている。
立川段丘の更に南側に位置する青柳段丘の崖線(ママ)から湧き出るママ下湧水は、府中用水へ流れ込み谷保の田園地帯を潤している。
崖線に沿った雑木林とその下に広がる水田、段丘を横切る道の両側の石垣。ママ下湧水を解説した国立市教育委員会の案内板に書かれたのどかな景色が、今失われようとしている。
あろう事か、よりによってこの湧水の真上で新しい道路の建設が始まっていた。前回訪れた時には気づかなかったが、計画はかなり前からあったようで、サイト上でも多くの方が失われようとしている景観を惜しんで反対を表明したり、破壊前の写真を掲載している。
近くには満願寺の渡し跡があり、同じ場所で中央高速が多摩川を渡っていることから、ここが交通の要所であることは想像できる。それ故に当然の成り行きなのかも知れないが、人々が以前より環境問題に敏感になっている今、「なぜ」という想いをぬぐい去ることはできない。
昔から多くの旅人がこの水で疲れを癒したことだろう。しかし、21世紀の旅人にはその恩恵はないのか?
※ この訪問後、程なくして日野バイパスが開通し、左写真の場所は湧水公園になりました。