写真に写っている横型のザック、いまの人たちには見慣れない形ではないですか。帆布で作られたキスリングといいます。
フレームのついたバックパックが登場するまで、大型のザックと言えばこれでした。登山家はもちろん、北海道などで低予算の旅をする若者(今で言うバックパッカー)などにも幅広く利用され、その姿から「カニ族」という呼び名も生まれました。横幅が広いので、狭い道を歩く時やすれ違いの際に横歩きをしなければならないのです。
わたしの学生時代はちょうど移行期で、アタックザックと呼ばれる、今一般に使用されているのと同じ縦型のザックが流行り始めた頃でした。ミレーのザックが憧れの的でしたね。
アルプスを縦走する山岳部の合宿などではキスリングがまだ幅を利かせていましたが、さすがに沢登りでキスリングとは当時でも珍しい姿です。同行した後輩は大学生になったばかりでまだ個人で装備を揃えるお金が無く、部室にあったお古のキスリングを借りてきて沢ガニになったというわけです。