青空の下、シュラフにくるまって気持ちよさそうに眠っているのは、夏合宿でしごかれた1年部員です。私が学生時代に所属したクラブ(ワンダーフォーゲル部)では、長い合宿の合間に停滞日という予備日を設けて、その日はリーダ学年が水汲み、炊事その他の雑務を全部引き受けるという慣例がありました。彼は今日1日、上げ膳据え膳で惰眠を貪るわけです。
この年の夏合宿は私がリーダとなって、北小谷、風吹大池から白馬、鹿島槍、針ノ木、三俣蓮華と下って、槍ヶ岳までの大縦走を企画しました。14日間の長丁場でしたが、2日ある停滞日の1日目は台風による日程調整で使ってしまい、この日が合宿期間中唯一の休息日です。休息の楽しさもさることながら、白馬岳からは爪の先ほどにも見えなかった槍ヶ岳を目前にして、登頂への期待感とここまでの道程に対する感慨に、誰もが浮き立っていた1日でした。
そんな気分にふさわしい青空です。
写真中央に写っている槍ヶ岳は夏雲にかすんで小さく見えますが、肉眼で見たその姿は両手をかざしても隠せないほどに大きく見えたことでした。
人生三大昼寝というのがあるとしたら、この時が彼にとっての一番になるのは間違いないでしょう。うらやましい一枚です。