神代ケヤキ
東京都青梅市御岳山148付近
「トトロって絵本に出てたトロルのこと?」
映画「となりのトトロ」(1988、監督・ 宮崎 駿)でサツキちゃんが、妹のメイに言うせりふ。メイのみつけたトトロは古木の根方でイビキをかいていた。
日本でも西洋でも大きな樹には何かが宿っていると考えられてきた。それは神や妖精のような見守ってくれるものであったり、嵐の夜に迷子を襲うオバケであったり。子供番組(※)に登場した「かしの木おじさん」は、頼りになるけどちょっととぼけた村の長老風だった。
御嶽神社に続く参道の半ば、宿坊が続く中に立つケヤキは、日本武尊東征の昔から生い茂っていたと伝えられる堂々たる古木だ。仰ぎ見た時の迫力ある姿は、人類の歴史を越えた太古の昔を偲ばせるに十分な存在感を持っている。実際は樹齢600年ぐらいらしい。
600年前の自分の祖先がどんな人だったかは、人となりはおろか名前さえも分からない。けれど、このケヤキの大樹は600年前もすっくと起立してこの地にあった。そう思うと人の歴史なんて儚いものだ。
幾たびの嵐をくぐり抜け、麓で起こる戦乱の数々を見、信心深い登山者の喜びや悲しみを見守ってきた古木は、確かに神の世界の住人なのかも知れない。
※ NHK・おかあさんといっしょ、にこにこぷん(1982-1992)