ムラサキ
東京都調布市深大寺南町1-25(調布市野草園)
工業化が進み、コンピュータが発達して寸分違わぬ製品を量産できるようになった時代にも、“色”だけは全く同じものをつくるのは至難の業だ。化学反応によってつくられる染料はもちろん、電気信号が作り出すモニタの色も統一するのは難しい。
高貴な色として昔から好まれた紫は、同じムラサキという草の根から作り出されても東西で微妙にそのニュアンスを異にしている。
赤みがかったみやびな感じの京紫に対して、江戸紫は青が濃く江戸っ子のいなせな雰囲気を表している。その江戸紫を生み出したのが、武蔵野に咲くムラサキだった。
「紫のひともとゆえに武蔵野の 草はみながらあはれとぞ見ゆ」
と古今和歌集に詠われたその花も、今では絶滅危惧種に指定される幻の花となってしまった。調布市野草園で、今、その可憐な花を見ることができる。
よほど蜜が美味なのか、人間が近くにいて写真を撮っているのもお構いなしに、モンシロチョウが二匹、花から花へと飛び戯れていて離れることがなかった。
江戸紫 (C92:M98:Y27:K11) | 紫 (C58:M89:Y5:K7) | 京紫 (C62:M96:Y30:K27) |