松庵の梅林(と古い住宅のこと)
東京都杉並区松庵2-23
映画「となりのトトロ(監督:宮崎駿、1988年)」の主人公日下部一家が越してきた家は、瓦屋根の黒々とした日本間の平屋に、マンサード屋根に下見板張りの二階建て洋館が張り付いた不思議な格好をしている。洋館の一階は前面いっぱいにガラス窓がしつらえられてサンルームになっているようだが、二階は鎧戸を閉め切って真っ暗だ。ここでメイが“すすわたり”(まっくろくろすけ)と遭遇するシーンは、何回見てもビックリして、そして笑ってしまう。
映画の舞台とされる昭和30年代にすでに「おばけ屋敷」といわれるほどに古びていたので、おそらく戦前か戦後すぐの建物だろう。昭和初期の和館に戦後、洋館(風)が増築されたのかも知れない。
荻窪の、中央線南側には空襲を免れた古い住宅街が広がっている。立教女学院から北へ走っていて見つけた梅林に惹かれて迷い込んだ住宅街で、トトロの家と似たような和洋折衷の住宅をいくつも見かけた。取り立てていうほどの名建築でも何でもないけれど、ミスマッチなようで何となくしっくりと来てしまう不思議な家を訪ねて回るのは、それはそれで楽しい散歩の杖になる。(個人宅なので写真を紹介できないのが残念だ。)
気のせいかも知れないが庭木に松が多いように感じた。よく手入れされた立派な枝振りを見て回るのも悪くない。