国立天文台
東京都三鷹市大沢2-21-1
GUAM島から東京まで船旅をしたことがある。その途上、船上のすべての明かりを消した漆黒の闇の中で見た星空は、きらびやかでゴージャスでたとえようもないぐらいに美しかった。
大正13年(1924)に、街が明るくなったからと浅草から三鷹へ天文台が移ってきた頃の武蔵野は、どれほど暗く静かだったのだろう。もうその空は見ることができないのだろうか?
武蔵野の森に抱かれた構内には、国の登録有形文化財に指定された歴史的な建築物があり、見学コースに沿って見ることができる。一番古い第一赤道儀室(大正10年(1921))は、「あれ?」と思うぐらいに小さな建物だがベランダを巡らした左右対称の姿が美しく、記念スタンプの図案にも採用されている。
天文台歴史館になっている大赤道儀室(大正15年(1926))では、ドームの内側に注目しよう。建築当時、半球面を作る建築技術が無かったため、船底を作る技術を持った造船技師の力を借りて作られたという。銅葺きの外観からは想像もできない船底のような木造構造が興味深い。
森の奥深くに眠るアインシュタイン塔(太陽分光写真儀室・昭和5年(1930))は、野川からもかすかにその姿を見ることができる。「太陽の重力によって、太陽光スペクトルの波長がわずかに長くなる現象(アインシュタイン効果)」を検出するために作られた、建物全体が望遠鏡という「塔望遠鏡」だ。