野津田薬師
東京都町田市野津田町3424(薬師池公園内)
連休の行楽に繰り出した人々で賑わう薬師池公園の奥に、隠れるように建つ薬師堂の周りには静けさが満ちている。時折訪れる参拝客が鳴らす鈴の音は、がらがらと轟いて彫物の獅子や龍が一斉に吼えだしたかのように響く。
境内には立派なイチョウの巨木がそびえている。秋には一面に黄金色の絨毯を敷きつめることだろう。
力士の髪型(髷)を「大銀杏」という。それに洒落た訳でもないとは思うが、銀杏の木に向き合って建つ采女靈神の碑は、髪結い(床屋)の始祖といわれる藤原采女亮(うねめのすけ)を記念して昭和10年に建てられたものだ。
添えられた町田理容組合の説明板に書かれた家康渡河の話を補足すると、髪結いのことを一銭職ということの由来として、全理連(全国理容生活衛生同業組合連合会)のHPに次のような記事がある。
「十七代目の藤七郎は元亀三年(1572)、武田信玄に敗退中の徳川家康の天竜川渡河の案内をし、その功績で笄(こうがい・髷に横にさすかざり)と銀銭一銭を賜り、以後一銭職と称えるようになった。」(一銭職由緒書)
ちなみに、采女亮が開業した「床屋発祥の地」は山口県下関市にあるそうだ。