矢口の渡し
東京都大田区矢口3-20
江戸時代に平賀源内作の戯作「神霊矢口渡」の舞台として有名になった矢口の渡しは、芸能界入りした渡しとしては寅さんやヒット曲で有名な「矢切の渡し」の先輩格にあたる。
近くにある新田神社に祀られた新田義興の謀殺事件を題材にしたこの噺は、今でも浄瑠璃や歌舞伎の演目としてたびたび上演されている。多摩川の流れは時代と共に変わり、事件当時の渡し場は新田神社の近くにあったと考えられているが、江戸時代中期には今の多摩川大橋の上流側に移り、昭和24年(1949)まで大田区内最後の渡船場として使われていた。
大橋の下流側に繋留索を結ぶ赤い杭(ボラード)がならぶ船着き場があった。災害時の物資補給を目的に造られたものだと言うが、ちょっと波止場の雰囲気のする憩いの場として市民に愛されているようだ。