銭湯の富士山
東京都小金井市桜町3-7-1(江戸東京たてもの園・子宝湯)
富士山の眺めが一番いいところ。それはたぶん銭湯だ。大きな湯船につかって「極楽、極楽。」なんて言いながら、雄大な富士山のパノラマを満喫する。
これが本物の富士なら、かなり贅沢な楽しみ方だろう。
銭湯の富士の絵は、大正元年(1912)に東京から始まったらしい。他の地域では絵そのものがなかったり、富士山以外の題材が描かれている例もあるという。一般に男湯と女湯は絵が違うので、誰もが銭湯で富士の絵を見られたわけではないようだ。
江戸東京たてもの園の「子宝湯」では、男湯に富士山、女湯には剣岳に似た峻峰が描かれていた。
今や風前の灯火となった銭湯だが、最近はいろいろな種類の浴槽のあるスーパー銭湯が人気を博している。残念ながら壁に富士山の絵はなく、「カコーン」という余韻のある桶の音に代わって、ジェットバスの音がジャバジャバゴボゴボと騒々しい。
近所のおじさんが浪花節をうなっていた昔の銭湯が懐かしくもある今日この頃だ。