石川啄木歌碑
東京都台東区上野7-1-1(上野駅15番ホーム)
それまで地方の言葉だと思っていた方言を、自分たちもしゃべっていると知ったのは小学生の時だった。小学校の国語の授業で、われわれの住む調布の出身ではない先生が“初めて聞いた言葉”として「けっぽる」と「おっこちる(おっこどす)」を指摘したのだ。
「けっぽる」は蹴って抛るということだろう。僕らはいつもキックベースやサッカーをする時、元気よくボールを「けっぽって」いた。
「おっこちる」「おっこどす」はそれぞれ“落ちる”“落とす”ということなのだが、微妙に「うっかり」というニュアンスが含まれているように思う。木登りをして足をすべらせると、まっさかさまに「落っこち」て痛い目に遭うというわけだ。
上級の学校に進み、会社に入って、調布の外へ出るとそんな言葉を聞くことはなくなった。調布にも新しい人が増え、みんな標準的な言葉で話している。
「ふるさとの 訛なつかし 停車場の 人ごみの中に そを 聽きにゆく」
岩手から東京へ出てきた石川啄木が、ふるさとへの郷愁から詠んだこの歌の碑が、上野駅にひっそりと置かれている。人の流れは新幹線の方に移ってしまったけれど、かつては、中央改札正面に櫛形に並んだいわゆる「低いホーム」は東北方面に発着する列車とその乗客でにぎわい、お国言葉を懐かしく聴くことができる場だったのだ。
調布弁は、どこで聞けるだろうか。