深沢家屋敷跡
東京都あきる野市深沢7番地
秋川の支流、三内川に沿って登っていく。車にも人にも会わない静かな道が山の奥へと延びている。夏ならセミの声が喧しかったことだろう。今日は秋風の音すら聞こえない。
以前にあじさいを見に来た南沢を過ぎ、赤い帽子に白髭のこびと達に挨拶をして"深沢小さな美術館"をやり過ごし、「この先行き止まり」の看板に突き当った先に、門だけになった深沢家屋敷跡が見えた。
まだ日本に憲法がなかった明治のはじめに現代にも通用する先進的な内容で作成された、五日市憲法草案が昭和43年(1968)に発見されたところだ。
がらんとした屋敷跡に立って、時代の変わり目に闘わされた先人達の熱い議論に思いを馳せてみる。あたりに漂う寂寥感に、長い長い時の隔たりがそこにあることを思い知らされた。
谷を覆う山越しに射す秋の陽を受けて、色づき始めた木々の葉がキラキラと輝いていた。時は流れ、人は移っても、自然の営みは変ることがないのだな。