草刈の碑
東京都北区志茂5-41-21先(水門公園)
わたしは草むしりが嫌いだ。掃きそうじや拭きそうじならやったところは必ずきれいになるけれど、草むしりはそういうわけにはいかない。狙った草が根っこから抜けず、地上に出た分だけがむしれてしまった時の徒労感がイヤなのだ。
大人になって、根っこを残したまま地上部分を鎌で刈る方法を知ったけれど、子供の頃に教わった「草は根こそぎ抜くべし」という考えが染みついているので、あまり草刈りはやったことがない。かといって草むしりを完璧にこなすわけでもないので、わたしの担当区域は雑草だらけになる。
まぁ、校庭の隅の雑草ならわたしみたいな学生がやり残しても問題はないだろうけれど、農家の畑仕事にそれは許されない。かくして、「農民魂は先づ草刈から」となるわけだ。
旧岩淵水門を渡った先にある水門公園に建つこの碑は、昭和13年(1938)から6年間に亘って開催された全日本草刈り選手権大会の記念碑だ。全国の予選会を勝ち抜いた農民たちが、この地で草刈りの技を競ったのだという。
昭和13年といえば国家総動員法が制定された年でもある。そんな時代の機運と選手権の開催は無縁ではあるまい。この碑を戦争の記念碑というのはちょっと乱暴かも知れないが、あの時代を記録する証人であることは確かだ。