俊足狛犬
東京都渋谷区本町2-44-3 荘厳寺
古代オリンピックの選手は、裸で戦ったらしい。鍛えぬいた肉体美を見せるため、あるいは不正を防ぐためなど理由はいろいろに言われている。
わたしが子どもの頃の運動会では「はだし足袋」というものを履いて徒競走を走った。裸足にどういう意味があったのかわからないが、古代オリンピックの精神に通ずるものがあったのだろうか。
近年のスポーツ競技では、例えば陸上競技の場合、全天候型トラックの採用やシューズの改良など肉体(筋力や技術)以外のアシストによって記録を伸ばすことが行われている。
子供たちの運動会でも、それ専用の運動靴がヒット商品になって久しい。
靴メーカーのアキレスはギリシャ神話に登場する俊足の神に由来する名だが、神話にはもう一人ヘルメスという足の速い神が登場する。ヘルメスは羽のはえた靴を履き、飛ぶように走ったという。
幡ヶ谷不動尊・荘厳寺の狛犬の後ろ脚には羽が生えている。体型を見る限りはとても速そうには見えないが、だからこそ俊足の靴を履いて備えているところと見た。阿形はこれで勝ったも同然と不遜な表情だが、吽形は靴の成果が出るか出ないか心配と緊張でしかめっ面をしている。
宝暦三癸酉年(1753)奉納。