2020年5月12日(火)

都市の祝祭

東京都目黒区上目黒2-1-1 中目黒ゲートタウン

巨人

♪季節のない街に生まれ 風のない丘に育ち 夢のない家を出て 愛のない人にあう

最近は乱暴者の偏屈おじさんなイメージが先行する泉谷しげるだが、デビューしたころはこんな繊細な歌を歌っていた(春夏秋冬、1972)。ビル風がなかった昔、風が無いことは味気ない都会暮らしの象徴だった。

精霊たち

長い髪をなびかせ、無数の風車を風に踊らせる巨人の姿を見て、わたしが最初にイメージしたのは北の大地に立つアイヌの大男。あるいは森の中から立ち上がってあたりを睥睨するダイダラボッチか。泉谷が歌った風のない丘とは正反対の、富良野か美瑛あたりの波がうねるように連なる丘の上を渡る風が見えた。

周囲には無数の精霊たちが遊び、壁には象形文字のように彼らの図象が並ぶ。都市開発によって掘り起こされた遺跡から、自然あふれる太古の昔にタイムスリップしてしまったかのような不思議な世界が広がっている。

作者はナディム・カラム(Nadim Karam)。奇妙な姿の精霊たちは「古代の行列」と名付けられた彼のシリーズ作品に繰り返し登場するキャラクターで、オリジナルの101体に加えて「忍者」など日本独自のモチーフで創造されたここだけのキャラクターも混じっている。

作品には関係ないが、泉谷しげるは隣町の目黒区東山に育ち、東山中学校を卒業したそうだ。

浮遊する雲 / 百の月の池(ジャン・フランソワ・ブラン)