浮遊する雲 / 百の月の池
東京都目黒区上目黒2-1-1 中目黒ゲートタウン
地下へ降りる階段の先に、夜空に星をちりばめたような景色が広がっている。「百の月の池」と名付けられたインスタレーションは、池に月が映り、波間に揺れるその姿がいくつにも散らばって見える様子を表しているのだそうだ。
広場にはナディム・カラムの「古代の行列」に登場するキャラクターたちの姿も見える。古代文明の壁画から生まれたような不思議な姿が、プラネタリウムで星座を解説する時に現れる神話の挿絵のイメージにシンクロする。
星空を見上げて悠久の時に思いを馳せた昔を思いながら目をあげると、頭上にUFOの船団のようなものが浮いていた。見ようによっては虫の蛹のようにも見えて、ちょっと気味が悪い。ほのぼのとした気持ちが一気に吹き飛び緊張感が走る。
その内に空を閉じ込めて不自然なほどに青く見える「浮遊する雲」のイメージは、遥か未来の空。作者のジャン=フランソワ・ブランの意図は池と空だが、わたしは夜と昼、過去と未来、安らぎと緊張、そんな相反する表情を持った二つの空を感じた。
二つの空に挟まれた地上には、精霊とも地球外生命とも思える不思議なキャラクターたちがあふれている。
時空の歪みに迷い込んだような不思議な感覚。人が消えた街で、今まで経験したことのない不安と緊張に満ちた毎日を過ごす心に映った、これは幻影なのだろうか。
(地上の作品) 都市の祝祭(ナディム・カラム)