2020年6月29日(月)

坪沢橋

東京都西多摩郡奥多摩町留浦

アーチ

奥多摩湖に架かる峰谷橋、麦山橋、坪沢橋、鴨沢橋、深山橋の5橋は、小河内ダム建設に併せて、昭和32年(1957)に架橋されたものだ。奥多摩湖の観光利用を意識して、カラフルなアーチ橋が採用されている。

路面

…のだが、坪沢橋だけは上路式RCアーチ橋で橋長も約60mと短く、ぼんやりしていると気づかずに通り過ぎてしまう。

湖面からしか全体を見られないのが残念だが、写真でみるとほぼ扁平なアーチが軽やかに橋桁を支えるスタイリッシュな姿をしている。

この5橋の計画には御茶ノ水の聖橋の設計にも関わった成瀬勝武が参画しているのだが、彼はスイスのマイヤール(Robert Maillart)が設計したアルヴェ橋を絶賛する論文(※)を残しており、坪沢橋はこの橋を参考にして設計されたという(設計は本間左門)。

マイヤール風のRCアーチ橋はこのほかに、岐阜県飛騨市の宝橋(1935)にあるだけの珍しい形式だ(宮城県名取市の開運橋(1928)は2011年東日本大震災で消失)。となればぜひその姿を見てみたいものだが、坪沢橋は目立ちたがりの他の4橋に対抗するかのようにひっそりと姿を隠してニヒルにほくそ笑んでいる。

※ 「ロベルト・マイラアと彼の橋」(土木技術 昭和33年(1958)1月号)