奥多摩橋
東京都青梅市二俣尾3丁目 - 柚木町1丁目
アーチ橋はきれいな橋だ。古くは眼鏡橋などとも呼ばれた上路式も、空に優美な弧を描く下路式(または中路式)も、その美しさを演出するアーチは上方に凸の曲線となって橋を支えている。
ところが、奥多摩橋には何と下向きのアーチがついている。
中央径間はスパン108mのブレースドリブアーチで渓谷を豪快に跨いでいるが、その両脇に天地が逆なアーチが二俣尾(青梅街道)側に一つ、柚木(吉野街道側)に二つ付いている。
これは魚腹アーチ(逆ボウストリングトラス)と呼ばれる構造で、素人のわたしにはどういう目的で採用されたものなのかわからないが、国内には数例しかない珍しい形式だ。
川原に下りて見ると、戦前は日本一の長さを誇ったという雄大な姿に感動する。周囲には、COVID-19の影響で控えめながらも、水遊びをする家族連れや、ゴムボートで川下りをするグループなどの姿がちらほら。そんな人々を、大天狗のように大きくて真っ赤な橋が、山の神として見守ってくれているように見えた。