蓮根歩道橋
東京都板橋区高島平1-1
中央に空いた丸い穴の周りから三方にのびた道が、さらに5つの階段と3本のスロープに分かれて地上に降り立つ。高速道路のインターチェンジのようなその姿は、レトロフューチャーな未来像に現れる空中都市を見るようだ。
竣工は昭和52年(1977)。設計者のクレジットは東京都建設局・首都高道路公団となっているが、歩行空間のデザインを横浜ベイブリッジなどにも関わった橋梁デザイナーの大野美代子(エムアンドエムデザイン事務所)が担当している。
ベビーカーや車椅子でも渡れる傾斜のゆるいスロープや通路に設置された手すりなど、利用者に優しいデザインが当時としては先進的だった。
中でも特徴的なのは、橋上広場に置かれたベンチだろう。苦労して階段を上り長い橋路を歩いてきたお年寄りが一休みするというだけでなく、何の目的も無くてもつい立ち止まりたくなるスペース。長年の間に大きく育った中央分離帯や街路の植栽が、公園のような居心地を演出している。地上の喧騒から切り離されてしばし非日常の空間に憩う、安らぎを感じる空間だ。
道路を渡るというだけのことなのに、ちょっとだけ心が豊かになったような気がする。毎日利用している地元の方は、知らず知らずのうちにそんな体験をしていることに気づいているだろうか。
…と思うのはわたしだけ?