不動滝
東京都八王子市裏高尾町1785(宝珠寺)
「不動(の)滝」と呼ばれる滝は数多い。名前を冠していなくても、不動明王を祀った滝やお不動さんの境内に流れている湧水が「滝」と呼ばれている例など、滝と不動尊の縁は深い。
一説に寄れば、不動明王に関する教えを説いた「聖無動尊大威怒王秘密陀羅尼経」というお経の中に、「静かな山林に入り清浄な場所を求めて修行をしなさい。または、河の水に入ってお経を唱えなさい。(超意訳)」という一説があることから、山岳宗教の滝行と不動信仰が結びついたといわれている。
小仏川上流の宝珠寺境内に落ちるこの滝も、岩の上から剣を持って仁王立ちになった不動尊が睨んでいる。
滝はL字状になった廊下の奥にあり、入口からは全体の姿を見ることができない。写真を撮るために奥へ進んでいくと、滝の周りは岩に囲まれた個室のような空間になっていた。この狭い空間で勢い良く落ちる滝と一対一で対峙すれば、宗教的な心構えを持たない人でも、厳粛な雰囲気に呑まれてしまうことだろう。滝に打たれて自分の内面に向き合ってみたい。そんな気持ちが自然と湧いてくる不思議な空間だった。