狛 虎
埼玉県所沢市中富1501(多聞院)
「女豹」という言葉がある。あまり良い意味では使われていないと思うが、いわゆる肉食系のセクシーで挑発的な美女を指すようだ。
多聞院の毘沙門堂を護る狛犬代わりの虎は、細身の体をしなやかにくねらせて虎よりは豹に近い感じ。まさに女豹の雰囲気だ。
奉納されたのは慶応二年(1866)。その当時、豹や虎の実物がどの程度知られていたのかわからないが、一般の狛犬がいかにも想像の動物然としているのに比べるとそのリアルさが不思議に思える。
お堂の前には小さな虎の人形がずらりと並べられていた。これは「身がわり寅」といって、奉納すると厄災を身代わりとなって被ってくれるものだ。
「あんたら、こんなんに頼って弱っちいわね」。女豹の狛虎は、そんなセリフを言いたげな顔をしてこっちを睨みつけている。