2012年3月13日(火)

日支事変戦没軍馬犬鳩慰霊碑

東京都文京区向丘2-38-22(光源寺)

日支事変戦没軍馬犬鳩慰霊碑

立派な梅に惹かれて駒込の大観音・光源寺に歩み入ると、児童公園になっている境内の中ほどに「慰霊埜(の)碑」「日支事變戦歿軍馬犬鳩」と彫られた石碑を見つけた。碑の中央には線刻の馬頭観音が描かれ、左下には「東都納札睦會」「維持昭和十四年五月建之」とある。

昭和12年(1937)の盧溝橋事件に始まる日中戦争に従軍した軍馬、軍犬、軍鳩たちの慰霊碑だ。

この碑が建てられた頃はまだ、日常生活でも農作業や交通手段などの労働力として動物たちが活躍をしていた。戦場に於いても、馬は移動や物資運搬の役を担い、犬は番犬や偵察犬として、鳩は伝書鳩として情報伝達の重要な任務を負っていた。近代兵器や無線設備などの発達によってその役目を終えることになる彼らが、最後の活躍をした時期でもある。

軍用動物の慰霊碑が建てられると言うことは、「共に生きる仲間」として動物たちに対しても平等に接する優しい心が残っていた古き良き時代だったのだな、と考えたいのだが物事はそれほど簡単にはいかないものだ。「共に生きる仲間」は「共に戦う仲間」でもある。

「馬犬鳩たちもお国のために身を捧げて戦っている。われわれも後れを取ってはなるまいぞ。」

そんな声がどこからか聞こえてくる。無謀な戦いへと盲進したあの時代の忘れかけていた記憶を、この碑は静かに伝えているのだ。

大観音の梅