伊能忠敬像
東京都江東区富岡1-20-3(富岡八幡宮)
「乗り鉄」と呼ばれる鉄道旅行マニアには「最長片道切符の旅」(宮脇俊三、1979)というバイブルがあるが、散歩(旅)好きにとってのそれはなんだろう。日本一周ではないけれど松尾芭蕉の「おくのほそ道」、あるいは司馬遼太郎の「街道をゆく」あたりになるだろうか。
水戸黄門も諸国漫遊をしたことになっているが、本当に日本一周をした先達といえばこの人、伊能忠敬を忘れることはできない。
旅でも散歩でも必ずお世話になる日本地図の、原形となる「大日本沿海輿地全図」を実測によって作成した人だ。
一仕事終えて隠居した後に測量・天文学を学び、10回、足かけ17年にわたる測量の旅に出たのが56歳の時だというから驚く。現代人なら一線を退いて、散歩や旅行に悠々自適の生活を始めようかという年代だ。
測量の旅に出る前に、道中の安全を祈って立ち寄ったという富岡八幡宮には、しっかりと前を向いて歩き出す彼の銅像が建てられている。その矍鑠とした姿に励まされて、まだまだ歩き続けるぞ(散歩でも人生でも)との思いを新たにするのだった。