2013年6月9日(日)

岩手山

岩手県盛岡市から

杜の大橋

「ふるさとの山に向ひて 言ふことなし ふるさとの山はありがたきかな」

盛岡の駅に降り立つと、目の前に大きな岩手山が見えた。盛岡はもちろん、岩手県に来たのが今回初めてのわたしにも、石川啄木が「ありがたい」と詠んだ気持ちがストンと胸の内に落ちる、そんな景色だ。

盛岡駅

今日の目的は、岩手県立美術館で開催中の特別展「若冲が来てくれました-プライスコレクション 江戸絵画の美と生命-」。

美術館まで歩く道のりを、岩手山がずっとついてきた。ふるさとで待つ母のような、あるいは、遠くから静かに見守る父のような、どっしりとした岩手山の姿がいつも視界にあることに安心する。

雫石川を渡る杜の大橋では、ニセアカシアの甘い香りに懐かしい気持ちが盛り上がってきた。初めて来た町が、なんで懐かしいんだろう。

翌日、三陸へ行った帰り道、久慈から乗ったバスが盛岡に近づくと、薄暮の空に岩手山の大きなシルエットが見えた。わたしが子供の頃に聞いたのと同じカエルの声が窓外に広がる田んぼから聞こえる。「ただいま」。自分のふるさとでもないのに、思わずそんな言葉が口をつく。

山影が夕闇に溶ける頃、バスは渋民を通過した。