長 滝
東京都西多摩郡奥多摩町氷川(川乗谷)
謎の異星人が「わーい」と手を挙げてウォータースライダーから滑り降りてくるところ。あるいは、その異星人がテレポーテーションで自分の星に戻ろうとする、まさにその瞬間の残像。
この姿を見て、そんな変なことを考えてしまった。
一枚岩の上を滑らかに滑り落ちてくる美しい滝だ。登山道からでは状況がわかりにくいが、右下に大きな穴が空いていて、樋状の大岩を渓谷の斜面に立て掛けた上を流れているようにも見える。
「樋状」と書いたけれど、雨樋のような細長いものではなく、手のひらを合わせて造ったような幅の広いもの。小さな写真では見にくいが、岩には洗濯板のような細い横縞が無数に入っている。その縞模様と岩のゆがみ具合が動物の肋骨のように見えた。…解体する前の牛肉の半身、とか。
異星人から始まって、連想はどんどん滝から離れていく。爽やかに心やすらぐ景色であるはずなのに、思いは不安で生臭い方向に流れていく。これは一体どうしたことだろう。
あの岩の陰の暗闇の中に、狐か狸か、あるいは異星人が潜んでわたしを惑乱させようとしているのか。