遭難者追悼碑
東京都西多摩郡奥多摩町氷川(川乗谷)
百尋の滝の手前で、登山道はいったん沢床に降りる。渡渉点には臨時の木橋が渡され、もともとここに架かっていたと思われる鉄製の頑丈そうな橋は、10mほど下流で無惨な姿をさらしていた。「一人づつ渡ってください」と書かれた注意書きには昨日(2013.8.27)の日付が付いていたけれど、橋が流されたのも臨時の木橋が渡されたのもずっと前のことのようだ。
渡ってすぐの岩壁の下に、遭難者の追悼碑が建っていた。昭和53年(1978)に18才で亡くなったと書かれている。ちょうどわたしが大学で山登りをしていた時の後輩(1年生)と同年代だ。わたしも高校の時に同級生を北アルプスの針ノ木谷で亡くしている。その思い出がよみがえってきて胸が痛む。
岩壁の上を巻く登山道には昨年(2012)の日付のある「転落注意」の注意書きが設置されていた。その頃事故があったということか。そう言えば登山口の細倉橋には今年の6月に行方不明になった方の情報提供を求めるビラが貼られていた。
死を賭して険しい山岳に挑むような時代ははるか昔のこととなったとは言え、山の危険が無くなることはない。かく言うわたしも、カメラと水筒だけの軽装でここに来ている。遭難者予備軍とお叱りを受けても言い訳はできない状態だ。
過信を戒め、油断に注意して、山に眠る仲間たちに思いを馳せながら、追悼碑に黙礼して、慎重に歩き出した。