奇跡の一本松
岩手県陸前高田市気仙町字砂盛176-6
神よ、どうしてわたし一人をお残しになったのですか。どうして仲間たちと一緒に行かせてはくれなかったのですか。
あの夜、一本松は空を仰いで嘆いたことだろう。その松も召されて、その姿をかたどったモニュメントが残された。
召されてなおその骸をさらしたくないという思いもあったかもしれない。巨費を投じてモニュメントを残さなくても、小さな石碑をひとつ建てたらいいじゃないか。ほかにやるべきことがあるだろう、という意見もある。
でも神は、彼にモニュメントとして残ることを御命じになった。復興のシンボルとして人々に希望を与えよと、使命を課せられたのだ。
復興にはシンボルや物語が必要なのだ。三陸鉄道や奇跡の一本松があったからわたしは東北を思い、東北に旅することが出来た。そういう興味本位な態度を快く思わない方もいるだろう。その意見は甘んじて受けるつもりだが、無関心であるよりはいいじゃないかと言い訳もしたい。
いろいろな人の、さまざまな意見・批判・応援を受けて一本松は立ち続けている。