2014年11月7日(金)

犬島精錬所美術館

岡山県岡山市東区犬島327-5

煙突

大正8年(1919)の操業停止以来廃墟となっていた犬島精錬所跡が、三分一博志設計の美術館となって平成20年(2008)に蘇った。建築とコラボする形で柳幸典の「ヒーロー乾電池」という作品が展示されている。

船着場

美術館へのアプローチは、銅を精錬する過程で排出された鉱滓(スラグ)で造られたカラミ煉瓦が敷き詰められた船着場の跡を通っていく。崩れた壁の向こうに船からも見えた煙突が何本も立っている。煙突、煙突、と印象づけられて中にはいると、あぁなるほど、と思う。その種明かしがここではできないのが残念だ。

美術館の空調には電気や石油のエネルギーを使用していないそうだ。太陽熱や地熱で温められた空気を煙突を利用して対流させることによって実現しているという。既存の遺構やカラミ煉瓦をできるだけ再利用し、トイレの廃棄物を植物を育てるために使用するなど、随所にエコロジカルな設計思想が反映されている。

地球の資源を使い果たして滅んだ文明を、自然の力が再生していく。そんな物語を感じさせる建築だ。

犬島精錬所跡