切支丹屋敷跡
東京都文京区小日向1-24-8
銀座から駒込を目指して、道に迷った。本郷通を真っ直ぐに北上すれば良いだけだったのだが、間違って神田川を遡りすぎてしまい、江戸川橋あたりから小石川植物園経由で行こうとしてえらい目にあった。
文京区は谷が多い。神田川から小日向の丘に登り、茗荷谷に下りてまた小石川台に上る。播磨坂を下って植物園の坂を登り、白山神社の前後にまた上り下りをくり返して、本郷台に上がればやっと駒込だ。尾根筋と谷筋を走る幹線を横断してつなぐ道は一筋ではなく、目印もない住宅地の道はわかりにくい。道の先が階段になっていて戻ったり、下った坂を上り返したり、と難儀する。
「これは神がわたしに与えたもうた試練なのか!」と叫んだら、目の前に「切支丹屋敷跡」の碑が見えた。ここに囚われた宣教師たちも、同じ言葉を叫んでいたことだろう。もちろん、別の意味で、もっと真摯に。
長崎近辺ならともかく、江戸市中に切支丹を捕らえておく施設があったとは意外だった。幕府はキリスト教を禁じつつも、異国の文化・知識を取り入れる窓口として、外国人宣教師たちを利用したようだ。新井白石はここでシドッティという宣教師から話を聞き、「西洋紀聞」を著したとされている。
さて、この先は右に行くか、左に行くか。神よ、わたしに進むべき道をお示し下さい。