やまびこ橋
山梨県北都留郡丹波山村1243 丹波山村営つり場
丹波川に大きな吊り橋が架かっている。スリルとサスペンスに満ちた峡谷の小橋でも、最新技術によるグッドデザインの名橋でもないけれど、山里に吊り橋はよく似合う。平成元年三月竣工と銘板に記されていた。
橋の両側は階段になっていて歩行者専用ということのようだ。自転車を担いで階段を上り、ゆっくりと牽いて渡ってみた。河原は広く渓谷美は望めないけれど、ぐるりを囲む山々に抱かれているような雰囲気に心が落ち着く。
橋を渡り始めたら音楽が鳴りだした。村の時報代わりの放送かとも思ったが、そんな時間ではない。誰かが橋を渡ると演奏が始まる仕組みになっているようだ。遊園地のアトラクションのような演出が、吊り橋を渡るという非日常的なイベントを盛り上げてくれる。
…と思っては見たものの、よくよく考えればあの音楽は「村外の人が来ているぞ」というお知らせだったのだろう。
「お客様がいらっしゃいました。みんなでおもてなしをしましょう。」なのか、「怪しい人が来ているので注意しましょう。」なのかはわからないけれど、深い山に閉じ込められた小さな集落の複雑な事情が垣間見えたような気がした。