中村草田男先生句碑
東京都武蔵野市吉祥寺北町3-3-1 成蹊学園
夏草に 汽罐車の車輪 来て止る
暑苦しく夏草が生い茂った操車場にゆっくりと進んできた蒸気機関車は、鉄路の端に止まると足元から「ブシュー」と蒸気を吐き出した。それでなくても暑い夏の昼下がりの景色が、さらに温度が上がって見える。山口誓子のこの句(1933年作、『黄旗』所収)を、長いこと中村草田男の作だと思いこんでいた。
単に名前に「草」が入っていたから、かどうか理由は判然としないけれど、ずいぶんと乱暴な記憶だ。同時代の俳人として並記されていたものを混同したのかも知れない。
その草田男が成蹊大学に勤務していたと初めて知った。大学の西側をまわって高校・中学へと続くケヤキ並木の途中に彼の句碑が建っている。
この並木道は、1996年に環境庁が選定した「残したい日本の音風景100選」に指定されている。説明には「新緑の優しく爽やかな葉ずれ(春)」「濃い緑の下のしじま(夏)」「軽やかに舞う落ち葉(秋)」「木枯らしの後の一瞬の静寂(冬)」と静かめの音風景が記されているけれど、わたしには「行き交う学生たちのさざめき」「蝉時雨」「嵐に翻弄される木々のざわめき」「梢を渡る木枯らし」といった音量の大きな情景の方が印象深い。
みなさんはどう思われるだろうか。