ベネッセのニキ・ド・サン・ファール
東京都多摩市落合1-34
「見ても見えず、聞いても聞こえない」ということがある。光を感知することができても見えない、音の振動を感じても聞こえない。物理的なセンサーは機能していても、脳がその信号を認識し理解しなければ見えも聞こえもしないのだ。
耳が遠いはずのお年寄りが、悪口だけは聞こえて怒り出すということがある。あるいはほかの人とは違うものが見えたり、聞こえたりして気味悪がられたりする。全ては脳の働き、…なんだろうと思う。
岡山に本社のあるベネッセが多摩センターに東京本部を建てたばかりの頃、最上階にあるプラネタリウムを見に行ったことがある。この派手派手しいアート作品はその時にもあったはずなのだが、全く記憶にない。その後、何度も彼女の作品に出会うことになるのだが、FARET立川で再会しても思い出すことなく、直島のベネッセで見た時も、箱根彫刻の森美術館でも気づかなかった。
それが最近、「なんか思い出せないけどモヤモヤするなぁ」と思い始めて多摩センターに行ってきた。
やっぱりあった、あった。エントランスの噴水の前にある八岐大蛇みたいな作品は「蛇の樹」(1992)。玄関前に仁王立ちしたウルトラ怪獣・高原竜ヒドラに似た像は「恋する大鳥」(1974)。ウルトラマンつながりで言うと、四次元怪獣ブルトンにそっくりのオブジェ「フラグメントNo.7」(フロリアン・クラール、2006)が新しく加わっていた。
興味があるかないか、まさにその点が見える見えないの分かれ道なんだなとつくづくと思い知らされた。
フラグメントNo.7 || ファーレ立川 | 直島