牛浜渡津跡(石濱渡津跡)
東京都福生市北田園1丁目先(多摩川中央公園内)
JR五日市線と五日市街道に挟まれた多摩川河川敷に広がる多摩川中央公園は、適度に林があり、せせらぎがあり、広い草原があって健康的に楽しめる公園だ。その中ほどに、牛浜渡津跡の碑が建っている。
“渡津(としん)”というのは渡し場のことで、流域にいくつもある「○○の渡し跡」同様、ここには五日市街道の牛浜の渡しがあったと言うが、石碑には「石濱渡津跡碑」とある。教育委員会の説明は「牛浜」で、手前に立つ石柱にも「うしはま」とあるが、さて?
解説によれば、足利尊氏が人見原(府中市)・金井原(小金井市)で新田勢に破れて一時待避した「石浜」が、ここ「牛浜」ではないかとされているためこのような表記になったらしい。
府中からここまでサイクリングロードをノンストップで走って約1時間、電車なら50分ぐらいで青梅線牛浜駅に着くことができる。歩兵もいたであろう足利軍は何時間ぐらいでここまで逃げてきたのだろうか。
走りずくめで来たのか、どんな経路を通ったのか、そもそも何で牛浜なのか。
ふと、「点と線」という言葉が頭に浮かんだ。金井原古戦場跡といえば、野川を上流へ走るときにいつも通る馴染みの場所だ。初めて知った二つの点を結ぶ線に思いを馳せる。
府中周辺には大勢いたサイクリストやウォーカーの姿も、めっきり少なくなった。「ここまで逃げれば安心じゃ」と呟く鎧武者の姿が、夏の陽のゆらめきのなかに一瞬見えたような気がした。