もみじ橋
東京都国分寺市東元町2-18
童話「モモ」(ミヒャエル・エンデ作)に登場する灰色の紳士に時間を盗まれてしまった人たちは、わき目もふらずに駅までの道を急ぐ。たいした距離でもないのに自転車に乗って、寸秒を争って走り過ぎる。
野川の上流に素晴らしいもみじの道がある。こんなに美しい道を通るのに、なんてもったいないことだろう。
小さな子供たちは下を見てきれいな落ち葉を拾い、振り仰いで太陽の光にきらめくもみじに目を輝かせる。車椅子のお年寄りや、時間なんて関係ない恋人達は幸せそうに来た道をまた戻っていく。
よく見ると、足早に通り過ぎる人でさえも、もみじの色が映るのか顔色が優しい。時間泥棒にもあらがえない力がここにはあるのか。
秋の終わりに一時(いっとき)華やいだ道にも、やがて暗く冷たい冬が来る。しかしもう木々は春を迎える準備を始めていた。