お鷹の道
東京都国分寺市東元町3〜西元町1
どこだったか思い出せない。むかし、水路に沿って風情のある家並みのならぶ町を歩いたことがあった。並んでいたのは古い町屋だったか、武家屋敷だったか。
「お鷹の道」という名を初めて聞いた時、そのことを思い出した。
寛延元年(1748)から慶応3年(1867)までの間、付近が尾張徳川家の御鷹場であったためにその名が付いたというが、「お鷹」というのは女性の名前のようにも聞こえる。私の古い記憶にあるその町を、粋な着物姿で涼しげに歩いているお鷹さんがふと浮かんで消えた。
お鷹の道を紹介するガイドなどで、真姿の池近くの農家が野菜をならべている写真をよく目にする。のどかな様子が散歩の気分に似合っているということだろう。お鷹さんは働き者で気だてのいい農家のお嫁さんの名前かも知れない。清流で野菜を洗う手を休めて、こちらを見た笑顔がまぶしい。
そんなことを考えながら小径を歩く。
野川の不動橋から武蔵国分寺跡へつづく流れに沿ったこの道では、自転車は降りること。道が細くて危ないということもあるが、ぼんやりとゆっくりと歩いてこそ、この道は楽しい。