2007年7月16日(月)

狛うなぎ犬

東京都八王子市兵衛2-16(宇津貫熊野神社)

吽形

昔、ツインピークスという気味の悪い深夜番組が一世を風靡したことがあった(Twin Peaks、1990-1991、製作総指揮 David Lynch)。番組を提供していたのは駅前留学で勢いをつけはじめていた頃の英会話学校・NOVAで、番組の合間に挟まれる、噴水式の水飲みの水を上から撮っただけの不思議なCMと悲鳴のようなジングルがその不気味さを更に助長していた。

狛うなぎ犬

はじめにこの不思議な狛犬(?)を見たとき、ガーデンイール(和名チンアナゴ)という海の底から垂直に体を出して海草のようにゆらゆらとして暮す不思議な魚を思い浮べたのだが、人面魚のような何ともいえない顔とにらめっこをしている内に、ふと、あのCMのことが思い出されてきた。

ヤブ蚊が飛回る薄暗い境内の外は10年前に出来たばかりの横浜線の新駅を中心とする新興住宅地で、そのギャップが何とも言えない異様さを醸し出している。ツインピークス(双頭の山)が象徴していた二つの世界の混じり合わない同居がここに再現されているかのようだ。

明和二年(1765)に奉納された狛犬は前足を失い、おざなりに2の字を書かれただけの後ろ足もコンクリートに半分埋もれているけれど、その顔は長い年月をめげずに生延びてきたしたたかさに満ちている。町は発展していくけれど、「新参者なんかに大きな顔はさせん」と、彼らは不自由な体にむち打ってこの不思議空間を守っていくのだろう。

不思議と言えば、ここには葉っぱがラッパ形になる珍しいラッパイチョウの木がある。

ラッパイチョウ | 熊野神社について