渋谷の狼
東京都渋谷区渋谷1-12-16 （宮益御嶽神社）
♪男は狼なのよ 気をつけなさい
と、ピンク・レディーは歌っていた（「S・O・S」 作詞：阿久悠 作曲：都倉俊一、1976）。9月だというのにまだ暑い日が続く渋谷の街を、当時のピンクレディーの何十倍も挑発的な姿格好で歩く女の子たちをみると、おじさんは心配になってしまうのだ。
宮益坂にある御嶽神社には、日本狼の像が狛犬の代わりに置かれている。台座には昭和五十五年（1980）の銘があるけれど、社務所には延宝年間（1673〜81）の作といわれる日本狼石像が保管されており、この像は原形をモデルにして製作されたものなのだという。
もちろん、この狼は女の子を襲ったりはしない。御嶽神社の神使として、そう言うけしからん輩に睨みをきかせているのだ。
もっとも、神社はビルの陰にひっそりと隠れていて、宮益坂を行く人たちの99％は気付かずに通り過ぎているに違いない。いざというときに、この狼が「乙女のピンチ」を救えるのかどうか、なんとも頼りない気分がしておじさんの心は晴れないよ。