2019年9月19日(木)

大和波止場

広島県呉市宝町5-20

犬モ歩ケバ

波止場には黄昏が似合う。人影も少なくなった大和波止場に、一人佇む女性の後姿。海を見つめる彼女は、何を思っているのだろうか。

70数年前にも、こうして海を見つめていた人たちがいたことだろう。

大和波止場

大和ミュージアム(呉市海事歴史科学館)前の公園には、戦艦大和の前甲板(左半分)が実寸大で再現されている。艦橋をイメージしたあずまやや船上で時を告げていた時鐘、主錨のレプリカなども設置されていて、それなりの雰囲気を醸し出している。

錨の横には宣誓台のようなものがあって、「誓いの錨」と書かれたプレートが掲示されていた。ここは恋人の聖地に認定されている。訪れたカップルは二人で鐘を鳴らし、前甲板の先端でタイタニックのまねをしたあと、ここで「あなたのもとに錨を下ろします」みたいなプロポーズをするのかな。

芝生広場を散歩している犬たちは、籔内佐斗司の「犬モ歩ケバ… らぶ・やまと」(2007)。何もなかった空間に、突如現れた「どこでもドア」風の壁から、ひょいっと出てきて、また何事もなかったかのように消えていく。彼の壁抜けシリーズは他所でも見たことがあるが、周りに建物の無い原っぱでは不思議感が増して見える。

壁の向こうにはどんな世界があるのだろう?

(籔内佐斗司の壁抜けシリーズ): 走る童子(美術館通り) | 犬も歩けば…(横浜)